1/1 2001

21世紀を迎え…

 過去の積み重ねが歴史なら、未来への展望は何と呼んだらいいのでしょう。

 「歴史は繰り返される」と言う言葉があります。もしその通りなら「未来」は「過去の繰り返し」なのでしょうか。

20世紀は今までのどの世紀より急激な文明の進化を遂げ、そして未来への問題を残した世紀であったと思います。紀元の昔から文明は長い時間をかけ進化し続け、多くの利益を人間に残しつづけてきました。そして「文明=豊かさ」の価値観を疑問を提起しつつも確立してきたのです。文明が進化すれば進化するだけ、人はその進化した文明なしでは生きていけなくなるのです。豊かさが物質的な物に満たされる事では無いというのは周知の通りです。そして人が、文明のもたらす利益に翻弄されつづけてきた事も、歴史が教えてくれます。20世紀はその進化のスピードが早すぎた世紀です。人の価値観の変化がそのスピードについていかなかった事は言うまでもありません。

 長い時間をかけ、20世紀、それもそのうちのほんの100年たらずで急激に進化を遂げた文明社会。しかし、人間そのものはどの位進化してきたのでしょう。残念ながら殆ど変わってはいないのが現実です。しかし、緩やかな文明の進化の過程で、人は翻弄されつつも、その価値観を模索しつづけてきました。人は精神を持つ生き物です。文明の進化に翻弄されることが如何に己が精神を荒廃させているのか気がつく事の出来る生き物です。自分たちの作り出した社会、文明に翻弄される事の愚かさを感じる事の出来る生き物です。ただ単に環境の変化がその事に気が付かなくさせているだけ…と信じたいと思います。

 気が付く事、それがどれだけ難しい事か。さらに人に気づいてもらう事ははるかに遠く険しい道程でしょう。けれども如何に険しくとも、私たちはそれを実行していかなくてはならないと思うのです。

 歴史は繰り返される…しかし未来は過去の積み重ねの繰り返し、では無いと思うのです。未来は過去の反省の上に築かれる、人の気づき=「人の進化」であってほしいのです。

 私たちの生活はすべて身の回りに見える物だけでは成り立っていかなくなりました。すべてが世界の様々な現象や社会、経済と結びついています。それが見えてくるのが「気づく事」で、「進化」なのだと思います。私たちはどんなに小さな規模でも自分たちの利益を得たいと思います。しかし、利益の裏には代償が伴い、それを誰が支払っているのかも絶対に忘れないで欲しいのです。

 繰り返しますが人は精神を持つ生き物であると信じています。21世紀は融和と共存、そして一人でも多く「気づく」事の出来る「人」が生まれる世紀になって欲しいと願ってやみません。

名原 真人

Photo:Yuji Shinoda