2001年9月19日

報復の代償

 アメリカでのテロより1週間がたちました。

 日本国内のメディアの報道を見ていても、いかにも戦争になるのを明日か明日かと楽しみにしているかのようです。メディアやナショナリストの小泉首相だけではありません。一般の市民でもその傾向は強いのではないでしょうか。人を殺す事がそんなに楽しいのでしょうか。

 テロは決して許される事ではありません。しかし、武力による報復はなんの解決をももたらさないどころか、さらに多くの犠牲と憎しみを生むだけです。ましてそれを他人事のように、ゲームか何かの様に楽しんでいる人たちは決して許される事はありません。そんなに楽しみなのであれば自ら戦場で先頭に立てばいかがでしょう。このような、一人一人の心の成熟度の低さが、武力や経済力による自己中心的な世界構造をもたらし現在の南北の問題を生み出し、戦争を誘発しているのです。人が人を思いやる、それだけでいいのです。新聞やテレビで「明日をお楽しみに」といわんばかりの報道を楽しむ自分に嫌悪感を感じられなくなると言う事は、人として最低の条件をも無くしてしまった生き物です。そしてその他国の不幸が自己の生活の責にもつながっている事をまったく理解し得ず、しっぺ返しを予測できない哀れな生き物です。悲しいとしか言い様がありません。

 アメリカがテロで攻撃される理由をアメリカの市民もよく理解しなければなりません。自国が世界において何をしてきて、何をし続けているのかを理解し、報復でなく、より合法的な解決とテロの再発を防ぐ根本的な問題解決(たとえ不可能と思われても)に目を向けるべきです。今までアメリカが中東で「アメリカの正義」の名のもとに殺してきた数万の市民の事はだれも気にしていないのでしょうか。幾たびの戦争で瓦礫と化したアフガンの町に生きる子どもたちや、生と死の境にいる大量の難民はどうなるのでしょう。

 アメリカが自国の利益、繁栄のために今も日々死に追いやっている数万ではきかない第三世界の人々、子どもたちの死に対して報復を唱える人はいるのでしょうか。人の命の重さはそんなに差があるのでしょうか。

 とても差別的に感じます。

 今回のテロは誰の犯行か証拠も無いまま、ブッシュはラディン氏の名をあげています。仮にラディン氏の犯行であったにせよ、タリバンもラディン氏もアメリカが支援し、育ててきたような物です。今回のテロは、目の上のタンコブを壊滅するために、あまりにもアメリカにとって良い口実が出来たといわざるを得ません。どこかいかにも不自然な感がぬぐえません。

 アメリカではますますナショナリズムが高まっているようです。このままでは国際法上の根拠の無いまま、報復戦争をはじめるでしょう。戦争を望む市民が80%以上もいるとは正気の沙汰とは思えません。どう見ても、軍国主義時代の日本と同じように見えます。他国がこれほどまでのナショナリズムを見せれば、本来批判の対象になります。しかし、「世界の指導者アメリカ」は例外なのでしょう。このテロがアジア圏の国で起こった事であり、同様のナショナリズムが盛り上がってくれば世界は、日本はどのような反応を見せたでしょう。

 地雷、小火器…戦争の遺産を血の代償で継ぐものはいつでも女性や子どもたちです。そしてその恩恵を受けるのは一部の富裕層や大国であり、日本に住む私たちの生活そのものでもあります。それを当たり前のように無駄に費やし、戦争を楽しむ事は断じて許されません!

 いまこそ、人が人を思いやり、愛し、愛される事を知り、世界の様々な人々がお互いの価値観を学びあい共に生きる道を模索しなくてはならない時です。そして一人でも多くの人々が自己の生活を振り返り、本当の社会を見出す努力をはじめて欲しいと切望します。

福猫

戦争に反対する署名にご協力願います!